オーストラリアの母乳育児

“Community Child Health(Community Health Centres)”では体重測定やちょっとした健康相談ができますが、一番ありがたかったのは、母乳育児について指導してくれたことでした。アレルギー持ちの子供が多いなど理由はいろいろなのでしょうが、オーストラリアでも母乳育児を推進しています。わたしは「できれば完全母乳で育てたいな〜」と気楽に考えていましたが、産後2週間ぐらいから「母乳で育てるのって、大変……」と思い知ることになりました。あれやこれやとトラブルがでてくるんですよね。

息子が2ヶ月の頃、いつものように「何キロになったかなぁ〜」とわくわくしながら体重測定にでかけたら、一週間で45gしか増えていませんでした。それは少なすぎるということで、さっそくナースが母乳のあげ方をチェックしたり、状況を細かく質問したりしてくれました。乳首が痛すぎて直接飲ませることができないことや搾乳の頻度など説明し、それをふまえたうえで具体的にどうしたらいいのかを教えてくれました。

そして、体重以外で息子の健康状態に問題がなかったため、フォーミュラ(粉ミルク)を足せとは言われず、「とにかく、水をたくさん飲んで!」と指示されました。それから当時使っていたニップルシールド(乳頭保護器)をはずしてみるようにとも言われました。乳首に適度な刺激を与えることで、もっと母乳がでるようになるからだそうです。

残念ながら次の週にもあまり体重が増えていなかったので、今度はサプリメントを飲むようにとアドバイスを受けました。”fenugreek(フェヌグリーク)”というハーブです。「自然のもので、お薬じゃないからね〜」と軽く言われたのですが、「これでなんとか母乳のでがよくなりますようにっ!」とすがるような気持ちで薬局へ買いに行きました。そして、これが効いたんですね〜。飲む量やタイミングも教えてくれたので、それに従って最初は食後2粒づつ、一日3回飲んでいました。それから、お水やお茶などの水分も3リットル以上摂取するように言われました。そうそう、日本では母乳育児中のお母さんには「油っこいものはさけて、和食中心に」とすすめているようですが、世界中から移民の集まるオーストラリアではそういった食事指導はあまり一般的ではありません。というか、無理ですよね。例えばインド人は日常的にカレーを食べるだろうし、韓国人はキムチなどの辛いものがご飯のお供だろうし、お肉や乳製品がたびたび食卓にあがる家庭も多いだろうし、多民族国家オーストラリアで食について指導することは難しいのです。わたしが言われたことは「普段食べ慣れているものを食べていたらいい。でも、母乳育児中はスナック(間食)もとりながら、いつもより500キロカロリー多くとるようにして。健康的にたくさん食べてね!」ということでした。

フェヌグリークが効かないようであればGP(「ジェネラル・プラクティショナー」の略。一般医やホームドクター、かかりつけの医師のこと)から処方箋をもらって買える薬もあると言われていました。ただ、そこまでする必要もなく、たくさん食べて、がぶがぶ飲んで、フェヌグリークを摂取しているうちに、軌道にのりました。

不安な顔つきで体重測定にやってくるわたしを明るく励まし、適切な助言を与えてくれたナースたちには本当に感謝しています。初めての育児でわからないことばかりの中、こうして助けてもらえる環境はとてもありがたいです。

追記:フェヌグリークは薬局で買えます。カプセルになっていますが、独特のエスニックなにおいがします。それもそのはず、インドカレーなどのレシピにフェヌグリークが使われていることがあります。